民事訴訟法205条の書面尋問

民事訴訟法205条の書面尋問

 書面尋問は当事者に異議がないときにしかできません。
 そのため、証人尋問をしても意味が薄い、書面尋問であれば意味があるけど、当事者に異議があるので実施できない、結局尋問は行われない、ということがある。


(尋問に代わる書面の提出)
第205条
 裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅳ〔第2版〕』(日本評論社,2019年3月)272頁
【〔2〕書面尋問(尋問に代わる書面の提出)の要件
 書面尋問は、証人尋問に代えて、供述書の提出をさせることであるが、①裁判所がこれを相当と認めること、②当事者に異議がないことが要件であり、要件を具備した場合に実施することできる。
 相当性判断は、裁判所の賢明な手続裁量に委ねられるが、証人としての出頭ないし証言が困難であること、反対尋問の必要性が乏しいことを中心として、証人の住所(遠隔地か、交通事情はどうかなど)、繁忙度、体調などの属性(病気・高齢・難聴など)のほか、立場の中立性の度合い、要証事実解明のための必要性の度合い、反対尋問が欠けることのバランスまで、いくつかの考慮要素を総合して判断することになる(条解2版1133頁〔加藤新太郎〕、高田ほか・注釈(4)305頁〔安西明子〕、中野哲弘「証人尋問②-書面尋問」新大系(3)40頁、木村元昭「人証の特別な取調べ方法/書面尋問」民事証拠法大系(3)138頁)。例えば、証人が病気入院中であったり、拘禁施設に入所中であるような場合は、裁判所に出頭することが著しく困難か不可能であるから相当性ありという判断に傾くといえる。また、証人としての中立性が高ければ、客観的な回答が期待できるから、反対尋問が欠けるとしても問題が少ないと考えられ、やはり相当性ありという判断に傾くであろう。
 手続保障の観点から、当事者に異議がないこと(②) も要件とされているが、これは手続裁量の制約要素と解される。簡裁の訴訟手続においては、尋問等に代わる書面の提出につき、①の相当性要件は必要とされるが、②の当事者に異議のないことは要件とされていない(278条)。簡裁における手続の簡易化の要請によるものである。
この書面は、当事者から提出されるのではなく、証人たるべき者から提出される。したがって、証拠資料・証拠方法としての性質は、この書面は文書(耆証)ではなく、証言代替物(人証)である(伊藤410頁注(322))。】