要件事実  せりあがり

 

「原告が主張する請求原因事実の中に,本来被告が主張すべき抗弁を基礎付ける事実が当然に含まれていることがある。このような場合,請求原因事実と同時に,抗弁も基礎づけられる結果,原告は請求原因事実を主張する段階において,併せて再抗弁を基礎付ける事実を主張しなければならないことになる。このように,本来であれば相手方の抗弁主張の後に提出すれば足りるはずの再抗弁事実を,相手方の抗弁主張をまたずに提出しなければならない場合を「せり上がり」という。」
(弘文堂 「認定司法書士への道 理論編」25頁)

岡口基一裁判官
「「理論遊び」にすぎない見解ともいえるため、現在ではこれを支持する必要はありません。」
と指摘しています。
(創耕舎 岡口基一著「要件事実入門 紛争類型別」21頁)

 

 

「いわゆる「せりあがり」理論により説明していたのが、何十年も前の司法研修所民事裁判官室の見解

 同教官室の見解は、「理論が極めて精緻、先鋭化している」(田尾桃二・判タ630号88頁)などと批判されていたものです。

岡口裁判官 「要件事実マニュアル
「せりあがり」を説明したうえで、
「もっとも、従前、せりあがりの例として挙げられてきたものの多くは、要件事実の分配の修正として説明する方が妥当である」
と指摘しています。
(ぎょうせい 岡口基一著「要件事実マニュアル1 第5版」31頁)