東京高裁平成30年 1月30日判決
原判決当時,強制わいせつ罪の成立には,行為者の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行為が行われることを要するとする判例(最高裁昭和45年1月29日判決)があったが,その後,
この判例は,故意以外の行為者の性的意図を一律に同罪の成立要件とすることは相当でないとする最高裁平成29年11月29日大法廷判決によって,変更されている。もっとも,
同判決は,わいせつ行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為の性的な意味の強さに応じて,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合もあり得ると判示している。
本件強制わいせつ等の各行為には,
陰茎等を緊縛する,陰茎や陰部を露出させる,陰茎の包皮をむくといったそれ自体性的性質が明確なものも含まれる一方,
日常でも目にするような全裸又は半裸の乳幼児の姿態を写真撮影するという態様のものも含まれており,
それらのわいせつ行為該当性を判断するのに,被告人の性的意図の有無をも考慮要素とする意義はなお存するというべきである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・め
広島地裁h30.5.18
弁護人の主張に対する判断
第2
判示第6のわいせつ行為該当性
弁護人は,
最高裁判所大法廷判決平成29年11月29日が,性的な行為を「絶対的わいせつ行為」と「相対的わいせつ行為」に二分し,
前者については性的意図を不要としたが,
それでは「徒に性欲を興奮又は刺激させ」るとの従来からのわいせつ行為の定義に該当しないこととなるから,
わいせつ行為の再定義を裁判所が示せなければ強制わいせつ罪は成立しない等と主張するが,
被告人がcの肛門に自己の陰茎を挿入し,あるいは自己の陰茎をcに口淫させるなどした
本件強制わいせつ行為は,
その態様から見て性的性質を有するものであることは明確であり,
可罰的なわいせつ行為に
該当する
ことは明らかというべきである。