無断裸体撮影


警察庁刑事局調査統計官編著「判例中心特別刑法[補訂版]」(立花書房、1982年8月)33頁】

(照会)

甲女は、普通の入浴客のごとく、公衆浴場に入り、持参の「カメラ」をタオルでかくして入浴中のA女ら数名の裸体を撮影した。住居侵入罪は別論として、軽犯罪法第1条第23号違反になるか。

(回答)

積極に解する。

軽犯罪法第1条第23号の「ひそかに」とは、見られないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。不特定又は多数の人の面前で行っても、見られる者自身に秘して行えば「ひそかに」に当たる。

また「のぞき見る」とは、物かげやすき間などからこっそり見ることをいう。何の作為もしないのに自然に見えてしまったような場合は、「のぞき見る」には当たらない。望遠鏡で見たり、カメラを用いてひそかに写真撮影する場合も、これに当たる。

所問の甲女は、全裸で入浴中のA女らを、公衆の利用する浴場の中とはいえ、同女らの承諾なくして同女らに知られないように「カメラ」をタオルでかくして撮影したというのであるから「ひそかに」撮影したことになる。

また、「カメラ」をタオルでかくして撮影したというのであるから、最早何の作為もしないで、自然に見えてしまったという状況ではなく、作為的に「のぞき見」たことになる。

なお、所問の既遂時期は、カメラのシャッターを押してフィルムに露光させたときと解する。(局報24.9.619)